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変動する中学帰国枠入試の今 - 高まる国語と算数の重要性 -

変動する中学帰国枠入試の今   - 高まる国語と算数の重要性 -


中学帰国生入試は大きく変わっています。主な変化には、東京私立中学高等学校協会による帰国生入試の規定が明確になったことと、帰国生入試・グローバル入試で求められる英語力の水準が高まっていることがあります。また、これらが要因となり、帰国生入試における国語と算数の重要性が高まっています。入試を突破するためには、ハイレベルな英語力に加えて、国語と算数の知識も問われる時代に突入していると言っても過言ではありません。

まず、東京私立中学高等学校協会の帰国生入試に関する規定の明確化について触れていきましょう。変更点は2つあります。1つ目は、帰国生入試は11月20日以降にしか実施できなくなったことです。そして、2つ目は、帰国生入試の対象者が「1年以上海外に滞在し、帰国後3年以内の者」に限定され、より厳格な基準が設けられた点が挙げられます。

次に、帰国生入試・グローバル入試における受験生の英語力が向上している背景について考えられることをお話します。近年、「国際」という名称を冠した中高一貫校が増加し、英語でハイレベルな国際教育を受けることへの関心が高まっています。この関心の高まりと相関する形で上昇傾向にあるのが帰国生の英語力です。もはや、小学5年生で英検1級に合格し、小学6年生でEmily DickinsonやRobert Frostの英詩に批判的な考察を含む英作文を書く帰国生を目の当たりにすることは珍しくなくなりました。英詩から古典文学、英文法、英作文に至るまで、多岐にわたる分野を網羅的に学んだ帰国生が増えることで受験生全体の英語力は高まり、その結果として、学校側は試験の難易度を上げざるを得ない状況になっています。

それでは、国語と算数が重要な理由はどこにあるのでしょうか。まず、帰国生入試に関する規定の明確化により、グローバル入試を選択せざるを得ない受験生が増えました。グローバル入試では、英語のみならず国語と算数も受験科目となることが少なくありません。また、帰国生入試・グローバル入試を目指す受験生全体の英語力の向上に伴い、ハイレベルな英語力を前提とし、それに加えて国語と算数の学力も判断材料とする学校が増えています。英語で受験算数を出題する人気校もあったりと、特に算数に力を入れなければならない試験が多いほか、伝統的な女子校やGMARCH群の付属校では、一般入試とほぼ同等の国語力が求められる傾向にあります。

国語と算数における帰国生のニーズは、日本国内で一貫して教育を受けてきた一般生とは異なります。一般生には必要ないキャッチアップが必須であり、取り組むべき単元の取捨選択が大切になります。英語だけとっても、ただ書ける、ただ話せるだけでは不十分で、知識や思考力も備わったネイティブレベルの力に加えて、テストスキル対策もしなければなりません。さらに人気校や難関校の合格を目指すには、国語と算数の学習も疎かにできないのですから、帰国後の限られた時間でいかに効率よく学習を進めるかが重要です。

帰国生と言えど、これからは英国算の3教科で勝負する気持ちでないといけません。帰国生ひとりひとりが持つ強みと弱みを理解し、3教科をバランス良く学習することが、近年の帰国生入試・グローバル入試におけるカギとなります。しかしそれは帰国生にとって大きなストレスとなることもあるでしょう。私たち大人は彼らを精神的にサポートすることを忘れてはなりません。ニーズにあった効率的な学習と、子どもたちが自らを信じ、歩みを続けられる強いサポートが組み合わさってこそ、はじめて成功への第一歩につなげることができるでしょう。

Author
石戸 雄飛
石戸 雄飛

帰国子女アカデミー Compass Learning マネージャー